チュートリアル講演

第8回JAMITチュートリアル講演会(教育委員会企画)
「深層学習にできること・できないこと・期待すること」
コニカミノルタ科学技術振興財団 JAMITハンズオンセミナー連携企画

7月25日(水) 13:00-15:40 A会場(講堂)

座長:
花岡 昇平(東京大学),平野  靖(山口大学)

[概要]
深層学習への期待が続いている.このような状況のなかで,新たに深層学習に関連する研究を開始する場合,新旧の情報が入り混じり,環境構築に手間取る場合が多い.また,最新の動向に追いつくためには,情報の取捨選択が必要である.今回のJAMITチュートリアルは,大会期間中に会場で開催される「コニカミノルタ科学技術振興財団 JAMITハンズオンセミナー」と一部連携して,医用画像における深層学習の実際について集中的に講演を企画した.講演1では,深層学習を始めるために必要な知識の獲得と,具体的な利用例や研究事例について,データの収集方法も含めて講演いただく.講演2では,すでに深層学習の研究を実施しているものの,さらにその発展を考えている開発者/研究者に向けて,実行環境の最前線や,大規模環境な計算環境で実行されている研究事例の解説を行う.講演3では,導入が始まっている人工知能システムについて,その利用経験や今後期待する内容を,深層学習関連の研究を行っている臨床医の立場から解説する.

講演1

演者:
小田 昌宏(名古屋大学)
演題名:
医用画像における深層学習を利用した研究のはじめかた

[抄録]
深層学習を用いた医用画像処理研究の成果が多数報告され,従来手法を凌ぐ成果が得られている.現在,最先端の研究に追随するためには深層学習の利用が必須とも言える状況になっている.本講演では,深層学習利用により研究成果を得るために何が必要であるかを,深層学習利用のビギナーを対象として紹介する.医用画像処理には,検出,セグメンテーション,レジストレーション,画像変換,時系列情報処理等様々な処理が含まれる.深層学習はこれらほとんどの処理で利用可能であり,特に検出とセグメンテーションでは非常に高い性能を示す.研究者にとっての深層学習利用の恩恵として,研究開発スピードの向上,従来手法を超える成果を得られる可能性がある点などが挙げられる.また,目的別のアルゴリズム開発に要する時間を短縮し,実用化面への注力が可能である点も有用である.

講演2

演者:
中田 典生(東京慈恵会医科大学 超音波応用開発研究部・放射線医学講座)
演題名:
AIでできたこと・できなかったこと・これからの期待

[抄録]
米国を中心にAIを活用した画像診断支援診断システムが医療機器として認可された。また超音波診断装置には自動計測機能にAIが利用された装置が実用化されるようになった。これらの実用化や実臨床への普及が広がるにつれ、AI診断支援システム開発のための教師学習用データの作成が重要になった。これらの作成に携わる医師には、深層学習や機械学習の基本的知識の取得、膨大な教師学習用データ収集の必要性の認識や収集に必要な経済的財源の確保などの問題に取り組む必要性がある。また工学系研究者に必要なことは、世界中で絶対的に不足しているAI開発エンジニアの養成が急務である。さらには、立法行政機関を巻き込んだAI開発企業(主にスタートアップ)の支援、国内のみならず国際間の教師学習用データ収集の仕組みづくりや経験の蓄積が重要である。本講演では、これらの問題についてスタートアップ企業から世界有数の巨大AI企業の実例を挙げながら解説・考察する。

講演3

演者:
阮  佩穎(エヌビディア合同会社)
演題名:
深層学習のための研究環境最前線

[抄録]
画像認識や音声認識のような、基本的な分類や認識問題から始まった深層学習の流行は、年々広がりを見せている。その適用先は、自動運転車や医用画像を用いた診断支援などの応用から、大規模シミュレーションと組み合わせる応用まで、多岐にわたる。その一方、問題設定が大規模化、複雑化するにつれ、より多くの計算機資源が必要とされる状況は継続している。このような背景のもと、深層学習においては、高い演算性能をもつGPUを活用し学習を高速化することが一般的となっている。また、ハードウェアのみならずソフトウェアを含むエコシステム全体として継続的な性能向上や利便性の向上が行われており、さまざまな環境が提供されている。本講演では、深層学習に用いるGPUや関連するソフトウェアについて最新の状況を紹介する。あわせて、医用画像における適用例や、今後活用を期待できる手法などについても紹介する。