開催案内
JAMIT2018開催案内
第37回日本医用画像工学会大会(JAMIT 2018)を,会期7/25(水)~7/27(金)にわたって筑波大学天王台キャンパスの大学会館にて開催させていただくことになりました.今回の大会のテーマは「イメージング技術の新潮流とAIが結合した近未来の医用画像工学を探る」に設定して,この内容に合致した特別講演,チュートリアルセッション,シンポジウムセッション,ランチョンセミナーなどを大会長補佐の滝沢穂高先生(筑波大),プログラム委員長の目加田慶人先生(中京大学)と一緒に企画しました.以下に,主な内容を紹介させていただきます.
人工知能(AI)特に深層学習(ディープラーニング)は2~3年ほど前に医用画像分野に黒船のように襲来して,JAMIT2016(羽石秀昭大会長:千葉開催)ではJAMIT会員への紹介を主としたチュートリアルが開催され,JAMIT2017(藤田廣志大会長:岐阜開催)では「ハンズオンセミナー」や「ランチョンセミナー」など組織的な企画セッションが行われ一般講演もかなり申し込みがあり,次第にJAMITに浸透してきました.JAMIT2018においてもこの革新的な方向性を引き継ぎ,「チュートリアル:深層学習にできること・できないこと・期待すること」,「(岐阜に引き続き)JAMITハンズオンセミナー」,「シンポジウム:ディープラーニング:基礎理論から応用へ」,「シンポジウム:AI画像処理の応用事例と有効性・将来性・課題」,「深層学習に関するランチョンセミナー」の5つの企画を行うことにしました.また,一般講演でもかなりの数の深層学習に関する演題の申し込みがあると期待しています.初心者の方にはAIを勉強して始めるきっかけになる,AI研究者の方には医用画像分野におけるAI研究の様相を知ることができる,AI盛りだくさんの大会になると思われます.
また,JAMITが昔から取り扱ってきた得意分野のイメージングに関しても,新しい方向性を目指したり会員にインスピレーションを与えたりする特別講演2件を企画しました.1件目は,X線を波動と捉えて位相シフト分布を画像化するX線位相イメージングに関する講演「実用化を目指すX線位相イメージング」で,当該テーマの世界的権威である百生敦先生(東北大)にお願いしました.2件目は,会員の皆様が楽しく聞ける医用イメージングにもインスピレーションを与える講演として,植物の受精瞬間を捕らえた光学顕微鏡イメージングで世界的に注目されている東山哲也先生(名古屋大)に「顕微鏡イメージングで植物のメカニズムを視る」をお願いしました.また,関連するイメージングに関するシンポジウムとして,JAMITのお家芸であるCT,MRI,PET,SPECTの画像再構成に関する「医用画像再構成の基礎と新しい展開」,光を用いた新しいイメージングモダリティを拓く「光断層イメージングの新しい展開」を企画しました.
更に,つくば色が見えるシンポジウムとして,筑波大学が医工産学連携で7年間ほどかけて行ってきた手術シミュレータ開発プロジェクトに関するシンポジウム「医用画像を活用した3Dバーチャル手術:ソフト開発から,臨床評価,医学教育までとこれからの未来」を企画しました.
つくばでのJAMIT大会の開催は,JAMIT2007を「つくば国際会議場」にて開催(武田徹大会長)して今回が2回目の開催になります.当時はつくばエクスプレス(TX)が運行開始して間もない時期でしたが,その後10年間が経過してつくばの街並みや雰囲気もかなり変化して都会化して便利な街に変革しています.TXのつくば駅前は賑やかになり,おいしく食事ができる店やショッピングができる店が多くできました.上記の学会の内容と合わせて変革した新しいつくばもお楽しみください.最後に,JAMITは私がこれまでCTの画像再構成の研究を行ってきた上で最もお世話になった愛着がある学会で,今回大会長としてJAMITに恩返しできるということで充実感もって大会長の仕事に取り組んでいます.
是非,7/25(水)~7/27(金)にはつくばにお越しくださいませ.
特別講演・チュートリアル・シンポジウム概要
JAMIT2018では,特別講演2件,チュートリアル,シンポジウム4件,ランチョンセミナーなどを企画しましたが,内容の骨子を以下にまとめてお知らせします(内容がまだ未確定のものもあります).
特別講演1
演者:
百生 敦(東北大学 多元物質科学研究所)
演題名:
実用化を目指すX線位相イメージング
講演概要:
X線の波としての性質,すなわちX線位相コントラストを活用すると,従来のX線透視画像と大きく異なる高感度化への展開が期待される.主に軽元素で構成される軟組織によるX線の減衰は少なく,従来法では十分なコントラストが得られないが,X線位相イメージングではその撮影が可能になってくるからである.X線位相コントラスト生成技術は,X線光学分野において考案され,幾つかの方式が実証されている.特に,X線透過格子を用いるX線Talbot-Lau干渉計として知られる方式は,病院で使われているX線源や画像検出器を用いて装置化できるため,その実用化が大いに期待されている.講演者は,この十数年,この方式による医用画像機器や非破壊検査機器の開発を続けてきた.軟骨が可視化できることに基づく関節リウマチの早期診断を狙った装置は,現在大学病院において臨床研究に供されている.講演では,その原理から実用化の現状まで,できるだけ平易に解説する.
特別講演2
演者:
東山 哲也(名古屋大学 トラスフォーマティブ生命分子研究所/名古屋大学大学院理学研究科)
演題名:
顕微鏡イメージングで植物のメカニズムを視る
講演概要:
動かないように思える植物も,顕微鏡を通して覗いてみると,実にダイナミックに動いています.特に花の中では,花粉から伸びだした細い管である「花粉管」が,正確に卵のある分まで到達し,泳げない2つの精細胞を「重複受精」させます.私たちの研究から,初めてその様子が生きたまま映像として捉えられました.そして顕微鏡下での様々なライブセル解析から,花粉管誘引などの現象を支える生理活性分子が,鍵分子として見つかってきました.現在は,マイクロ流体デバイスを用いて,当研究所オリジナルの蛍光分子を使った1分子レベルでの詳細なイメージングや,組織丸ごとを使った深部イメージングなどにチャレンジしています.本講演では,植物の生殖を中心として,顕微鏡イメージングで見えてきた植物の未知の世界を紹介します.どんな逆境にも負けず,あの手この手で生殖を達成する,植物の真の姿をお楽しみ下さい.
チュートリアル
深層学習にできること・できないこと・期待すること
(コニカミノルタ科学技術振興財団 JAMITハンズオンセミナー連携企画)
講演1
「医用画像における深層学習を利用した研究のはじめかた」
小田 昌宏(名古屋大学)
講演2
「AIでできたこと・できなかったこと・これからの期待」
中田 典生(東京慈恵会医科大学)
講演3
「深層学習のための研究環境最前線」
阮 佩穎(エヌビディア合同会社)
シンポジウム1
医用画像再構成の基礎と新しい展開
世話人:
田島 英朗(量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所)
概要:
近年の医用画像装置の進歩は目覚ましく,特に体の中の様子を3次元的に観察できるCT,MRI,PET,SPECTなどのイメージング装置は,患者個々人の病態を細かく調べることができ,個別化医療の実現など医療診断の質の向上に大きく貢献しています.撮像された医用画像を元にしたコンピュータ画像診断支援の研究も盛んに行われていますが,本シンポジウムでは,今一度イメージングの手法自体に立ち返って,医用画像装置で測定された生の情報から画像を再構成するまでの基礎的な原理や方法,そして,現在注目されている画像再構成の手法や新しい展開について,画像再構成をご専門とされている諸先生方よりご講演いただきます.
講演1
「PET画像再構成の原理と実際,そして新しい展開」
小林 哲哉(株式会社島津製作所 基盤技術研究所 AIソリューションユニット)
講演2
「正則化逐次近似画像再構成法の基礎」
篠原 広行(首都大学東京/昭和大学藤が丘病院放射線科)
講演3
「SPECTにおける諸問題と最近の動向」
尾川 浩一(法政大学 理工学部)
シンポジウム2
ディープラーニング:基礎理論から応用へ
世話人:
庄野 逸(電気通信大学 大学院情報理工学研究科)
概要:
深層学習(ディープラーニング)は,画像処理,音声処理,言語処理といった分野を中心に現在の人工知能技術を支える要素技術の地位を確立しつつある.その応用範囲は識別,検出といったセンサ情報を集約する情報処理課題に留まらず,セグメンテーション,データ生成と言った能動的に情報を推定するような情報処理課題にも拡大しつつある.本シンポジウムでは,このディープラーニングに関して,基本的な部分に焦点をあて,基礎理論から生成モデルなどに至るまでの話題と現在の研究動向などを提供することを目的としている.講演者には,第一線で活躍している新進気鋭の若手に依頼を行っており,基本的な部分からの視点で,今後の技術発展の展望などを講演していただく予定である.ディープラーニングの実装を始めた初学者の方,どう発展させて良いか悩んでおられる方等が,本講演で新たな視点を発見していただければ幸いである.
講演1
「深層学習の基礎理論と発展」
園田 翔(早稲田大学 先進理工学部)
講演2
「統計的機械学習」
安田 宗樹(山形大学 大学院理工学研究科)
講演3
「Generative Adversarial Networksの基礎と応用」
金子 卓弘(NTT コミュニケーション科学基礎研究所
シンポジウム3
AI画像処理の応用事例と有効性・将来性・課題
世話人:
中田 典生(東京慈恵会医科大学)
現在内容をつめています.
シンポジウム4
医用画像を活用した3Dバーチャル手術:ソフト開発から,臨床評価,医学教育までとこれからの未来
世話人:
大城 幸雄(筑波大学医学医療系 消化器外科)
司会:
北坂 孝幸(愛知工業大学 情報科学部)
概要:
医用画像を活用したコンピュータ外科をはじめとするICT技術の医療への応用は,外科,内科,放射線科などの幅広い診断,治療になくてはならないものになっている.いまや医療技術は,画像処理,新規計測法,機械学習,深層学習,制御工学,ロボティクスなどの異種の刺激と融合により高度で多彩な変化を遂げている.医学教育では,実際の患者を対象にしたトレーニングから,人体構造と機能を模したシミュレータやバーチャル教材でトレーニングを行うシミュレーション教育の重要性が高まっている.本シンポジウムでは,「つくば」だからこそ集結可能な多様な分野の専門家たちで構成されたリサーチユニットのこれまでの活動成果についての講演と,これからの医療技術や医学教育の開拓,未来について,それぞれ医学,システム情報,企業の専門の立ち位置をつないで発展的シナリオを創造していく.
講演1
「医工連携によるバーチャル手術の取り組みとこれからの未来
大城 幸雄(筑波大学 医学医療系消化器外科)
講演2
「3Dバーチャル手術のための医用画像セグメンテーション」
滝沢 穂高(筑波大学 システム情報系)
講演3
「フルハイビジョン裸眼立体表示の医療応用」
掛谷 英紀(筑波大学 システム情報系)
講演4
「Hepatic Cockpit」
矢野 博明(筑波大学 システム情報系)
講演5
「先端医療技術とタッチレスインターフェイス」
坂本 堪亮(ネクステッジテクノロジ-)
総合討論
ハンズオンセミナー概要
JAMIT2017(藤田廣志大会長:岐阜開催)では,コニカミノルタ科学技術振興財団の助成を受けハンズオンセミナーというAIを用いた医用画像処理に関して勉強する実習主体のセミナーを開催して,予想外の人数の方が参加して大成功に終わりました.JAMIT2018では,その第2回目を企画しました.医用画像処理分野では,深層学習(ディープラーニング)などAI技術を用いた手法に技術がシフトしてきており誰もが興味を持つ状況になっていますが,経験のない若手技術者・学生・医師などを対象として,手を動かす実習を主体とする形式でAI技術を用いた医用画像処理に関して勉強しAIを実体験させ各自のAI研究展開のきっかけを与えるのがハンズオンセミナーの目的です.JAMIT独自の大変ユニークな取り組みになっています.