シンポジウム5 講演1

タイムドメイン拡散光トモグラフィーの課題と展望

演者:
星  詳子(浜松医科大学)

[抄録]
光と生体の相互作用は,吸収と散乱で,その程度は吸収・散乱係数によって表される.近赤外線は,ヘモグロビンや脂肪,水,タンパクなどの生体物質により吸収され,細胞膜や小器官など屈折率に違いがあるところで散乱される.従って,この波長領域の吸収係数は,他の医用画像法では検出できない生化学的・生理学的機能情報を持ち,散乱係数は生体組織の構造や細胞形態などの情報を持つ.拡散光トモグラフィー(DOT)は,生体のように濁った系で位置情報を失った散乱光を検出して吸収係数・散乱係数の分布を求める方法で,高度な数理科学技術に基づく生体内光伝播解析(順問題解析)と逆問題解析を必要とする.パルス光を用いるtime-domain DOTは,計算負荷が高く計算処理の高速化は必要であるが,定量計測が可能で,革新的診断・治療(光による操作)・経過観察法として期待される.ここでは,DOTを概説し,開発のボトルネック課題とそれに対する取り組みと,今後の展望について述べる.

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